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漁業や市場関係の専門家の予想では、わが国における魚介類の将来における供給は、まず問題がないということです。しかし、水産資源が世界的に減少傾向にあることは事実で、主要食材として魚介類を用いるすし業にとって、ここれは極めて重要な関心事です。
そこで、水産資源の保護・回復や栽培・養殖漁業の進展が期待されますが、われわれが直接に、水産資源の保護や育成に携わることはできません。しかし、国や国際機関のこの方面での努力に期待し、水産資源問題について理解を示し、正確な知識を習得したりそれを消費者に紹介するなど、間接的な貢献をすることはできます。
また、業界の課題としては、これからの魚介類の供給構造に合わせたすし業としての需要構造を形成する問題があります。現在のすし店の魚介類ほか食材の仕入れは、顧客の好みで決まります。要するに売れるものを仕込むということです。基本的にはそれでよいのですが、マグロの場合のように、供給量の少ないものに顧客の嗜好が集中すると、価格が高騰し、顧客に負担をかけ、自分の営業をやり憎くすることになります。現在、消費者にとって外食のすしは、どちらかというと高価格イメージで受けとめられています、その原因のかなりの部分は、マグロ、アワビ、
ウニ、イクラ、あるいはタイ、シマアジ、カンパチなどの高級魚など、供給の絶対量が少なく、高価格な食材がすし種のかなり大きな部分を占めていることにあります。
外食のすしが、消費者の食生活の中で十分で安定した地位を確保し、それを維持、発展させてていくためには、消費者の支払う価格と、すしが消費者に与える満足感のあいだに、良好なバランスがとれていなければなりません。そのためには、現在・将来とも供給(そして価格)が安定している食材に、消費者がより大きな満足感を得ることができるようにすることが必要です。すしの現在のあり方をそのまま続けると、どうしても、よりいっそうの高価格化が避けられず、すし業の衰退を招く恐れがあります。
そのような事態を避けるための具体的な方策は、原則として個々のすし店の工夫と努力に任せることになりますが、基本的には以下の3つのパターンが考えられます。
(1)従来の食材で、今後の供給が安定しているものを選び、その加工や 顧客への提供の仕方の工夫や改良により、人気商品化を図る方法。
(2)昔のすし種で、現在では用いられなくなったもののうち、安定供給が期待でき、価格的にも適切なものを復活させる方法。
(3)供給安定の条件にあった新しいすし種を開発してすし種のラインナップに加える方法。
とくに江戸前のすしは、新鮮で良質な素材の持ち味を活かすことを身上とすることから、これまですし種はあまり手を加えずに用いられてきました。しかし中には、煮る、炊く、蒸す、マリネにする、揚げるなど調理法の工夫で、これまで知られていない付加価値を生む可能性を秘めたすし種があるはずです。現在でもすでに、そのような工夫や努力を重ねて、成果を挙げているお店が一部にありますが、その技法やアイデアは個店のノーハウやオリジナリティにとどまっていて、すし業の共通の資産にはなっていないのが実情です。また、すし種の切り方、添え物や薬味の工夫などでも新しい味や、斬新な感覚を生み出すことで、従来のすし種に、新しい価値を与えることができるはずです。これらの努力を、すし業界が一丸となって積み上げることで、在来のすし種の間から幾つかの新しい、高級感があり付加価値性の高いすし種を開発できれば、現在問題になっている一部のすし種への根強い、偏った需要を、分散させることができるかもしれません。
むかし使われていたすし種で、近ごろは見掛けないものがあります。それらを復活させることも、マグロやウニなどに対する過大な負担を和らげることに役立つかもしれません。さらには、最近の形にはまりすぎた、すしのイメージを広げる効果もあるはずです。
米国に移出されたわが国のすし文化は、かの地に定着し、カリフォルニア巻やアラスカ巻、あるいはアヴォガドの握りなどの新しいすしの形を生み出しました。これが逆輸入されて、一部のすし店では商品のラインナップに採用されています。また、最近のあるテレビ番組は、香港の、地元の人が経営する日本料理店を取材していましたが、その中で奇想天外な様々のすしメニューが紹介されていました。その大半は、とてもいただけそうもない、突飛なものでしたが、幾つかは美味しそうに見えました。新しいすしメニューの試みは、本当は、本場のわが国でこそ一番多く為されなければいけないはずです。本場で新しい試みがなされないということは、その本場が老朽化し、活性を失ったことを意味します。そのことを、われわれ本場の業界は真剣に反省する必要があります。そして、新しいメニューを次々に開発することによって、すしの世界は多様化し、それによりマグロなど一部のすし種への嗜好の集中を分散させることで高価格化を抑え、消費者に貢献し、また、すし業自身の将来を守ることができるのです。
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